『彼はうそつきだ』
『彼女はいつも私を無視する』
これだけの単語をみると、悪い印象を受けます。
しかし、本当に真実でしょうか?
このように話す人がいたとしたら、「どのようにして」その答えを導き出したかを知る必要があります。
上記のような「情報」自体は全く意味を持ちません。
話の前後や全体の枠組み(文脈)によって意味を創りだすのです。
ある時点での解釈による意味付けは、正しいとは限りません。
「なぜ、うそつきだと思うのか?」
「本当にいつもうそをついているのか?」
「本当に毎回無視するのか?」
「そもそも、面と向かって話しかけたことはあるのか?」
など、例外や反例は見落としていないか前後を含めてしっかり観察する必要があるのです。本当は何が言いたいのか見極める、もしくは相手に気づかせることです。
観察するということ
観察を行うにあたり感覚を鋭敏にして、読み取る力(感度)をあげるということは、よりコントラスト(差異)に気づくことができるのです。
このことをコミュニケーション心理学の「NLP」では『キャリブレーション』と呼びます。
元々『キャリブレーション』という言葉は電子工学の分野で、「調整」とか「校正」という意味合いで使用されます。
「NLP」創設者のひとりであるリチャード・バンドラー氏がコンピュータ科学者でもあったため、そのように名付けたそうです。
『キャリブレーション』とは、
1.相手の言語・非言語の反応を読み取る。
2.特定の内的表象や状態を伴った振る舞いに同調する。
要するに、自分自身を相手や環境に応じて調整することです。
じゃあ、どうやって相手が伝えたいことや、本当は内に隠していること、思い込みで気づいていない部分を引き出していくの?って思ったかもしれませんので具体的にお話していきます。
基本的には、大きくわけて視覚情報・聴覚情報・体感覚情報の3つのポイントより判断していきます。
◇視覚情報
相手の表情や手足の動き、首の角度、目線、顔色、口元、呼吸、発汗などです。
人間言葉にしなくても、こういった外見に感情が無意識に表れることがあります。
例えば、肩が上がっていれば緊張しているのかなとか、目線がキョロキョロしていれば何か不安を感じているのかなとか、話しているときに頭を横に向けていればあまり話が理解できていないのかなとか、見てわかる情報は沢山あります。
このように相手の動きを観察することで、相手の本当の感情を推測していきます。
◇聴覚情報
声の高さ、速度、トーン、大きさなどです。
これらから相手の感情が無意識に表れていることがあります。
例えば、「ありがとう」という言葉のトーンが低ければ、あまり嬉しく思っていない可能性があります。
「わかりました」という返事が小さければ、本当は理解できていない可能性があります。
その言葉にそぐわない声のトーンや大きさなどにも注意を払い、相手の本当の感情を推測していきます。
◇体感覚情報
相手の体温や、触れた感触、においなどです。
身体の表面にも感情は表れます。
例えば、握手したとき手が汗ばんでいたら、緊張している可能性があります。
「なんか今日、口臭きつくない?」と感じたら、何か強烈なストレスを感じているのかもしれません。
この体感覚は触れたりすることで得られる情報なので、視覚・聴覚に比べると難易度が高い情報になります。
また、言動と態度に不一致を感じ取ることも重要となってきます。
このあたりは人間に元々備わっている能力で、コントラスト(差異)を感じると違和感を感じたりします。
◆同時性不一致
顔は笑っているが「ググッ」と拳を握っているというように、同時に別のメッセージを発信しているケースです。
◆逐次性不一致
笑っていたと思ったら直後に「ふぅーっ」とため息をつくというような、時間差で別のメッセージを発信しているケースです。
まとめ
このように相手をしっかり観察することで、相手の本当の心情や話したい事を理解できるようになれば、「この人はよくわかってくれてる」「この人の前では嘘はつけないな」というように、相手との深いコミュニケーションがとれるようになるのです。
例えば、相手との交渉の場などでは大いに発揮できるのではないでしょうか。
しかし、気を抜いていてはその辺に気づくことができないので、日々相手との会話でしっかり観察をするクセをつけて、いざというときに役立てましょう。